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ここはTW2シルバーレインの結社:フーテン塾による遊び場です。
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冬のある日のフーテン塾と、わたくしのお話ですわ。
二枚のイグニッションカードの完成に合わせまして、わたくしの自己紹介的な意味もこめてのSSを書いてみました。

出演いただいたフーテン塾のみんな。ありがとう。
タイミング的に菊理親分を出すことができなかった分は、いずれ!

問題などありましたら、わたくしまで御連絡くださいませ。



「待っていましたわー! この時をぉぉぉぉひょおぉわっ!?」
絶叫とも嬌声ともつかない声が響き、フーテン塾の教室が揺れる。
グローリアは今まさにフィニッシュホールドを決められていた。
彼女の使役ゴースト、エーベルハルトはグローリアの両腿を掴み、逆さまに持ち上げた上で、教卓から飛翔し、自らの尾てい骨を叩きつける形で床に落下した。
かの四十八の殺人技の一つ――キン肉バスターだ。
「お……おぉ、かふっ」
グローリアが喘いだ。
首折り、背骨折り、股裂きを同時に食らわせる必殺の一撃が彼女の身体を苛み、グローリアは目を剥いて悶絶する。逆さまになった唇の端からは涎すら垂れていた。
「うっ」
そして、グローリアは達した。白い頬を赤く染め、目を剥いたまま、悦楽の表情を形作る。
「そこで達するのーっ!?」
双翼のつっこみが走った。
つっこみ真拳の使い手と慕われる彼のつっこみは鋭く速い。
それに呼応するように、快楽に打ち震えるグローリアを抱えたエーベルハルトの胸骨に皹が生じた。
どのような騒音にも決して掻き消されることはない神速のつっこみは、筋肉などない身体でキン肉バスターを仕掛けたことで既に限界を越えていたエーベルハルトの身体に亀裂を生じる。
「そんなたいそうなものじゃない!?」
肋骨が割れた。それを皮切りに、腕がもげ、大腿骨がひび割れていく。
数瞬を待たず、エーベルハルトの身体が粉微塵に砕けた。彼が着ていた燕尾服の上へ、グローリアが力なく倒れこむ。その頭に無事だったエーベルハルトの頭蓋が落ちた。頭蓋骨だけになってもまだ、エーベルハルトはグローリアの頭を噛み締めている。
「……愛……ですわ」
グローリアが幸せに微笑んだ。
「いや、多分、それは愛じゃないから! 超人プロレスだから! というか、このありさまは何事?」
言いつつ、双翼は教室を見回した。
今まさにグローリアが命の灯火を消さんとしている横でザックがT様と共にバナナを食べていた。荒々しく山がつ(山賊などの同義語に近い言葉)の如く皮を剥き、貪り、皮は床に放り投げて悪党ぶった上できちんとゴミ箱に捨てるザックに対して、T様はひたすらに高貴に皮を剥き、高貴な仕草で果肉を口に運び、高貴極まりない態度で咀嚼する。ゴリラたちがその高貴さに当てられて興奮し、T様を殴っていたが、それすらも高貴。
部屋の端では塾長、たつみが睡と談笑している。ゴリラがチャイを運び、ゴリラが茶菓子を用意し、そしてメスゴリラ(BOSS)と睡がお茶を飲む。
外を見れば空き地では、チェスターが木刀を素振りしている姿が見えた。しかし、スペース示現流の使い手であるはずの彼からは「チェストーッ!」のかけ声が聞こえない。よくよく見れば、視線は足元の雑誌にそそがれている。ジョギングでもしてきたのか、近づいてきた真綾が雑誌を拾おうとすると、彼は両手を振って、何かを必死に否定していた。それでも、拾おうとする真綾の笑顔には何かとんでもない資質を感じざるをえない。
どこまでも、いつもどおりのフーテン塾がそこに広がっていた。
「……いつものことだぜ。紅尉。オレもようやくわかってきたぜ」
双翼の肩を叩き、モミアゲ逞しい少年が苦笑する。吉太だ。
「まあ……そうか。いつもどおりか」
双翼が納得した。
「まったくもってそのとおりですわ。わたくしたちの愛は未来永劫いつもどおり」
頬を赤く染めつつ、何事もなかったかのようにグローリアは立ち上がった。粉々になったエーベルハルト様は、骨を拾い集め、やはり何事もなかったかのようにしようとしているが、まだ下半身がない。一般に言うエーベルハルトタンクだ。
いまだキン肉バスターの痛みが取れないのか、彼女の動きはぎこちない。動くたび、苦痛に顔をしかめる。
「うっ」
それすらも心地よかったのか、思わず再度達した。
「な?」
「ああ。そうだな」
「いや。俺としてはああいう大技よりも、地味な関節技がいいな」
どこからかベイルが姿を見せた。
汚れたスカートをはたいているグローリアに熱い視線を投げる。
「実は俺は五十二の関節技を能くしているんだ。ジワジワと責められる……。そういうの、キミは好きかと思ったのだけど……」
「ジ、ジワジワ……」
グローリアがゴクリと喉を鳴らす。
「鳴らすんだ」
人の嗜好のことゆえに、双翼のつっこみはいつもより遠慮がちだ。
「そう。ジワジワだ。大丈夫。エーベルハルト卿をないがしろにするわけじゃない。彼にできないことを、キミにしてあげられるんじゃないか。そう思って……」
ベイルの肩を黒い毛に覆われた豪腕が握った。
「あ? え? ゴリラ?」
フーテン塾でも屈指の淑女ゴリラ、ゴリザベスその人(ゴリラ)だ。彼女はモジモジとしながら、ベイルの肩を思い切り握り締める。竹を素手で握り潰す握力に彼の肩が軋み、悲鳴が上がる。
「あ、あいたたた! ちょ、そこ、ダメ……って、どこへ!? え? ここじゃない落ち着けるどこか……って!? その熱く潤んだ瞳は、何ゴリラーっ! 燃える瞳は原始のゴリッ!!」
ベイルは何処かに連れて行かれた。
彼と彼女が去っていった方向を、双翼と吉太は呆然と眺める。
「いつもどおりだろ?」
「ああ、うん」
双翼は頷くしかなかった。
「いつもどおり幸せですわね」
垂れた涎を拭き忘れている程、心底から幸せそうにグローリアは言った。彼女の隣には骨を拾い終え、おおむね再生したエーベルハルトが立っている。遠くからベイルやチェスターの悲鳴が聞こえるが、今日もフーテン塾は変わらない。
「さて。そろそろ、いい時間だね。明日も平日だし、帰ろうよ」
たつみが立ち上がり、大きく背伸びしながら言った。
各々が返事して、のんびりと帰り支度を始める。泣きながら教室に戻ってきたチェスターとベイルも、鞄を持って、部屋を出る。
吉太が言ったように、それはフーテン塾のいつもの光景だ。



帰り道は皆、ばらばらだ。
季節柄、夜は早く、日が落ちた道を歩くうち、一人また一人と仲間たちが去っていく。電車で帰るものもいれば、自転車で早々に帰ったものもいる。家まで走るのだと、チェスターと真綾は競争して行った。
そして、最後には一人になる。
街灯の灯りに照らされた道を、グローリアは一人歩いていた。いつものドレスの上から、黒いハーフコートを着ているが、それでもこの季節の鎌倉は冷え込む。吐く息は白く、袖口から入り込む冷気に身が震える。
グローリアの住んでいる場所は、銀誓館からそれなりに近い駅前のアパートだ。学園と提携し、学生を受け入れているいわゆる学生アパートに、グローリアは一人で暮らしていた。
遠くに駅前の喧騒を聞きながらアパートの部屋に入る。
消えていた電気をつけた。「ただいま」の言葉の代わりに、グローリアは呟く。
「イグニッション」
手にしたカードが輝き、先程まで消えていた燕尾服の白骨が姿を見せた。
「ただいま。エーベルハルト様」
白骨は何も答えない。グローリアの声に会釈を返す。
彼女は微笑み、冷たい部屋の隅に置かれたストーブをつけた。
ストーブが動き出す音だけが静かに聞こえる。
静寂の中で、グローリアは何をするでもなく立ち尽くしている白い骸に目をやる。
「ぶってくださいまし。エーベルハルト様」
いつものように言うと、白骨の恋人は常備してある鞭を取り出して、グローリアの尻を叩いた。
「あんっ!」
一度だけ嬌声を漏らし、少しの間、悶える。
しばらくして、グローリアは素の表情に戻った。
先程、自分の尻を打ったエーベルハルトというスケルトンを振り向く。
白骨化した右手が上がる。その手を下ろし、逆の手を上げて、また下ろす。
その動きはグローリアが頭の中で望んだものだ。
「エーベルハルト様」
その名を呼ぶが呼吸器官のないスケルトンが答えるはずもない。ぽっかりと空いた黒い眼窩がグローリアの顔を見詰めているだけだ。
グローリアは苦笑した。
それは既にわかりきっていたことで、これからも変わらない。
かつて愛し、今も忘れることができないエーベルハルトはもういない。愛によって死から蘇り、自分を護ってくれているスケルトンは、エーベルハルトであってエーベルハルトではない。その記憶の残滓をかすかに受け継ぐ、エーベルハルトだった『もの』だ。
生前のエーベルハルトはグローリアの頼みなど、まともに聞こうとはしなかった。ひねくれていて、ドSで、しかし、そういうところが、ドMのグローリアは大好きだった。実際、彼もそれがわかっていたから執拗に弄り回してきたのだ。
スカルサムライ、エーベルハルトは生前のようにグローリアをいじめる。だが、それはグローリアの望みを使役ゴーストとして叶えているに過ぎない。
部屋を見ても、そこには故郷で使っていた家具はない。銀誓館への入学を期に、辛い想い出を忘れるために全て捨ててきたはずだった。
だが、忘れられない。エーベルハルトはもういないというのに。
溜息をつく。こうして気分が沈んでいる時に、慰めではなくビンタとスパンキングをくれた人はもういない。
フローリングの上に座り込もうとした時、不意にインターホンが鳴った。
「はい」
何も考えずに、ドアを開ける。
見慣れた顔が並んでいた。
「近くに寄ったので遊びに来ましたわ」
手袋を着けた両手を擦りながら、灰の髪の少女が言った。マフラーに顎を埋め、本当に寒そうに震えているのは、バレイアだ。
「突撃隣の晩御飯! というわけで、オレも来たぜ。何か食わせろよ」
バレイアの隣には人懐っこい笑みを浮かべたマイケルがいた。その笑顔がグローリアの背後を見て、引きつった。
「……って、グロ、てめえ! なにイグニッションしてんだ! しかも、鞭持ってやがる!」
マイケルがグローリアの背後で突っ立ったままのエーベルハルトを指して叫んだ。
「あら。もしかして、お邪魔でしたかしら? グローリア」
バレイアが寒がりつつも意地悪く笑う。
「あ、いえ。だ、大丈夫ですわ! まだ何もしていませんから」
「このビッチ! 『まだ』って言いやがった!」
二人を部屋に上げる。
人が増えるだけでまだストーブの効いていない室温が上がった気がした。
「借りてた漫画を返しに来ましたわ」
バレイアが肩からかけた鞄からコミックスを取り出す。色鮮やかな花々に囲まれた少女が描かれた表紙には『乙女坂コロリ』とタイトルがつけられている。
「ゲーッ! グロのくせにコテコテの少女漫画かよ! マジか!?」
マイケルの驚愕にバレイアが頷く。
「グローリアはこういうのたくさん持っていますわよ。ほら」
本棚には実際、少女漫画や恋愛小説が並んでいる。
「うわっ! オレが狂ってるのか!? マッドなのはオレか!」
マイケルが愕然としていた。
「今日、用事があってフーテンに寄らずに帰りましたからね。買い物で通りかかったので、立ち寄らせていただきましたわ」
「わざわざありがとう。バレイア」
コミックスを受け取り、本棚にしまう。触れたバレイアの手は冬の寒さで冷えきっていた。彼女の家はそれ程近いわけではない。寒い中を歩いてきたのだろう。
「……そうですわ。バレイア。実際、夕食を食べていきませんか?」
「え? いいですの?」
「ええ。一人で夕食は寂しいですから」
冷蔵庫を開けてみると、休日に買いこんでおいた食材は幸い豊富に残っている。
「色々ありますし、一緒に作りませんか?」
「いいですわね。わたくしの故郷の料理でも振る舞いましょう」
バレイアが笑顔を浮かべた。
その後ろでマイケルがベッドの下をゴソゴソと漁っている。
「マイケルは何をしているんですの?」
「グロがそんな少女趣味なわけねー! あっちゃいけないんだよ! ……って、これは……」
「ああ!? それは!」
グローリアの声が思わず上擦る。
ベッドの下から引きずり出した本をマイケルが高らかと掲げる。それは『隔月お尻ビンタ』。日本にただ一冊だけの、スパンキング専門誌だ。
「パパパパーンパーン! こんなところに隠しやがって! まるで、チェス山みたいだぜ!」
そのページをおもむろにめくっていくい。
「HAHAHAHA! グロ山はほんとにこういうのが……う、うわぁ」
勝ち誇ったマイケルの顔が戸惑いに変わり、そして、哀れな人間を見る時特有の蔑みとも憐憫ともつかない表情が浮かぶ。
「マイケル。レディの部屋でそんなことは……うわ……。これは……さすがに」
横から覗き込んだバレイアも明らかに引いていた。
「や、やめてください。あまり見ないで……見ないで。いや、これは……」
グローリアの背筋にゾクゾクとする感覚が走った。さすがに本棚に置いておくわけにはいかないと隠していた秘蔵の本を今、親しい友人に見られている。その背徳感に身が震え、快感すらも覚える。
「ああ……。見られていますわ。わたくしの恥ずかしいもの……。あんなにジックリと見られて……」
「てめえ! グロ! それでも、達するのかよ!」
マイケルが本を叩きつけ、バレイアが苦笑していた。
マゾヒスティックな快感を味わいながらも、グローリアは心が落ち着くのを感じていた。
彼らがいてくれることが嬉しかった。いじめられたりするのがいいだけではない。
エーベルハルトの死で全てを失ったと思っていた。だから、彼の死を受け入れたくなくて、いつも彼の亡骸に、彼と同じことをさせていた。それだけが自分をこの世界に繋ぎ止めていると思っていた。
……違いますわね。
銀誓館に入り、フーテン塾と出会い、それがわかった。まだ彼らが自分にとって何なのかはわからない。一人になれば寂しくなる。
それでも、支え、時にいじめてくれる仲間がいる。
「……うっ!」
「達しやがったー!」
グローリアは本心からそれが嬉しかった。
部屋の隅に佇むエーベルハルトが顎をカタカタと鳴らして笑う。彼が笑うのを望んだ覚えはない。その動きがエーベルハルトに残された魂が動かしたものならいいのにと、ほんの少し嬉し涙が滲む瞳で見ていた。
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» ゴリザベスは相当激しかったようです(でも懲りない)
グローリア嬢、それでは今度個人的に
プロレスごっこをして遊ぼうじゃないか。
今回できなかった関節技を掛け合おう。
特に股関節辺りを重点的にね。
ああ、無論エーベルハルト卿も一緒で構わない。
人数が多い方が燃えたり激しかったりするものさ。(にっこり)
ベル 2008/01/28(Mon)10:01:52 編集
» 心よりの感謝を
>ベイル
ありがとうございます。ベイル。
わたくしはベイルや、みなさんがいるから、こうして楽しく毎日を過ごすことができているんですわ。

超人プロレスごっこは……あの。よろしくおねが……
(エーベルハルトが首四の字にいったーーー!)
が、がはっ!? こ、これはし、嫉妬!?
嫉妬なのですか、エーベルハルトさ……グフ。
グローリア 2008/01/31(Thu)02:21:02 編集
» …えっと…
あれには、こんな秘密があったんだな…
貴殿が好きなこととはいえ、体は大事に…
山咲 2008/02/01(Fri)00:34:46 編集
» 日々、これ精進ですわ
>エリザヴェータ
ちなみに、この前にはキン肉バスターを編み出すための特訓まであるわけですが、それはプリンス(カメハメ)とわたくしの秘密……?

大丈夫。
互いに限界は心得ての超人プレイですから、心配御無用ですわ。
でも、ありがとう。エリザヴェータ。
グローリア 2008/02/04(Mon)23:14:27 編集
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