ベルSS『手紙』

――唐突だが。俺には一人妹がいる。

これがもう可愛いの何の。
正直兄である俺としては目に入れても痛くないどころか
むしろ「プリーズカムイィィン！」なんて叫んで
目の中に積極的に入れて一生そこで飼ってしまいたいくらいだ。

一度そう正面切って告白したことがあるのだが、
何故か非常に懐疑的な視線を返されてしまったため
嘘じゃないよホントだよと実演しようとしたところ、
恐らく照れ隠しなのだろう、頬にきついのを一発頂戴してしまった。
ふふ、可愛い奴だ。

さて。
そんなマイシスターから先日手紙が届いた。
本来ならばこの至福、独り自室に閉じこもり噛み締めたいところではあるのだが、
やはり幸福とはお裾分けするものだ。
君達にも俺の幸せな気持ちを少しでも味あわせてあげるべく、
今日ここにその手紙を持ってきた。これだ。

『――親愛なるお兄様へ。
まだ生きてるんですか？
そうですか。残念です。相変わらず図々しいのですね。
もしお兄様が自分の馬鹿さ加減にお気づきになり、
辞世あるいは脳手術をお受けになる際は遠慮なく仰ってください。
私がどんなに多忙でも最優先でお引き受けいたしますから。

ところで、先日お兄様が可愛がっていたインコが亡くなりました。
お兄様が好きだったビデオも消えました。
お兄様が大事にしていた調度品も壊しま壊れました。
偶然とはかくも重なるものなのですね。驚きです。
心中お察し申し上げます。

お兄様のベッドの下、
そして本棚の隙間にあった書物についてはご安心ください。
触るのも汚らわしいので一切触れてはおりません。
――燃やしました。部屋ごと。
いいですよね？　今更ダメだと言われても困りますけど。

蛇足ですが、探していた物件が見つかりました。
銀誓館の近くの森だそうです。詳細は後ほど。

お兄様が一刻も早く悔い改めますようシネバイイノニ。敬具』

ああもう可愛いなあ。
可愛いよね？　よね？